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海外営業の仕事内容とは

海外営業に求められるスキル

誰しも最初は未経験ですが、実績をある程度残すことができる海外営業ならばたいていは知っている、あるいはスキルとして当然持っているものを挙げていくと、たとえば次のようなものがあります。

自社の製品についての深い理解

自社製品のいいところ、悪いところをよく知り、顧客にとって何がメリットになるのか熟知していなければならないのは、国内営業と変わりありません。また、メーカーであれば、顧客側での使われ方だけでなく、どのような工程を経て製品が出来上がるのか、リードタイムや物流、商流などについての知識も必要ですし、実際に発注がきた場合の受注の流れも当然わかっていなければ仕事にはなりません。

つまるところ、英語力ばかりに目がいきがちですが、海外営業とは「営業」としてどうか、という点がとても大切です。どんなに英語ができても、営業としてだめであれば物を売ることはできません。ただし、国内営業として実績が出なくても海外営業として実績を残す人もいます。営業としてどうか、という視点は万国共通の部分と、お国柄が出る部分とに分かれます。万国共通の部分を外しているならば営業そのものに向かないでしょうが、日本向けの営業ではあわなくても、海外向けならば力を発揮することもあります。

うちでいえば、海外営業部5名のうち、ヤンキーやお嬢がこれに該当します。二人とも日本の顧客からは評判が悪く、ヤンキーに至っては一度出入り禁止になった国内得意先もあります。しかし海外顧客にはしっかり売ってきますし、欧州や米国とは相性が悪いようですが、ラテン系の現地人やインド、中東の顧客たちとは相性がよいようです。お嬢も、日本の得意先相手に話をすると非常に口調がきつく、相手に「なんだこの娘は?」と思わせてしまうタイプで、一度国内営業担当と同行した際には、国内営業から二度と来ないでくれと懇願された経歴を持ちます。

海外市場と顧客についての知識

同じ製品を売るのでも、市場によって展開方法や販売手法も臨機応変にやっていく必要があります。これは市場だけでなく、顧客の業界への理解も含みます。海外の市場、競合、ニーズ、顧客の実情についての知識はいわば会社にとって資産といえるほど貴重なものですが、国内同様に、海外にも国や地域によって固有の事情があり、それをよく理解して販売促進や新規開拓をしていく必要があります。

ここでいう海外市場の知識とは、書籍やマーケティングレポートなどから得られるものではなく、実際の顧客のいる市場を理解しているかどうかという点です。調査会社に丸投げしたリポートは、往々にして実情からかけ離れていることがあります。自分の目や耳で確認したことや、海外展示会や商談会、もっと市場に近いポジションの人たち、実際の業界でのプレイヤーたちから仕入れた情報をベースに構築した「海外市場の知識」が価値のあるものとなります。もちろん、統計データも補足的に知っておく必要はありますが。

社内調整力

海外営業としては、現地の市場にあったものを技術に開発させ、あるいは調整して販売していく必要があります。ときには無理解な幹部の妨害などによって案件が進まないこともありますが、うちの海外営業部のメンバーは皆「豪腕」です。

ともかく社内の関係者を巻き込んで海外へ売り込むという点については国内以上に積極的かもしれません。自社の事情もよく理解した上で、できること、できないことを峻別して相手に提案していくというスキルは海外営業に限った話ではありませんが、海外の市場を把握している当人たちがやらないと、当社の製品は海外市場から取り残されたものになってしまいます。

貿易実務の知識

海外取引とはすなわち貿易によって行われるものなので、仕向け地や製品の種類、相手の要望する貿易条件に合わせて、保険費用や輸送費などが的確に算出できねばなりません。また、相手国へ物を確実へ届けるために必要な法規制やルール、日本からものを送るのであれば、日本の輸出規制に関する知識も必要です。また船便なのか、エアーなのか、それぞれについての物流知識もある程度は要ります。

物流フレームの構築などという大層なものは本当の大手くらいしか関係ありませんので、基本はフォーワーダーとよく話し合ってルートの候補を調べ、顧客に提案するという形になります。

英文契約法務の基礎知識

基本的に毎々の取引ごとに契約をする個別契約にしろ、取引基本契約や販売代理店契約のように、期間中その取引のすべてに影響するようなGeneralなものにしろ、相手と契約条件について交渉し、自社にとって有利な形に持っていかねばなりません。

中小企業の場合、契約書をないがしろにするところがありますが、論外です。契約書とは仲良しこよしの証ではなく、「トラブルが発生したときにどのように解決するかを記した手順書」です。相手の言うがままにサインしてしまったり、メールや書面で覚書すら残さずに取引を開始してしまうとあとでトラブルの元になり、場合によっては今までの売上金が吹き飛んでしまうこともあります。相手から品質保証対象外のことについてクレームをつけられ、全数の代替納入を求められる、なんてこともざらにあります。

代金回収の基礎知識

海外取引の大半を占めるL/C(信用状取引)やそれ以外の決済方法について有利不利やリスクなどを理解したうえで交渉を進める必要があります。海外営業の場合、ものを実際に届けるデリバリーとこの決済については特に注意を要します。早い話、金が回収できなければ売上げゼロではなく、マイナスになります。どうやって回収するのか、回収できなかった場合のリスクをどうやってヘッジするのか、という視点で仕事を進めていきます。

タフネス

諸外国との取引では、日本の取引のように相手に察してもらうというような奥ゆかしい風習はありません。ごり押しすればよいというものでもありませんが、返事がなければ、返事を何とでもさせて見るくらいの気概がないと厳しいものがあります。また油断しているとこちらに非がないのにこちらのせいにされたり、といったことも珍しくありません。

ある程度の英語力

以上を見ていくと、海外営業=英語力というのは必ずしも当てはまらず、むしろ当てはまらないことのほうが多いかもしれません。法人営業で、特に技術的な内容を伴うようなものであれば英語力があるからといって物が売れるわけではないからです。この辺りは、おしゃべり好きの人が必ず有能な営業マンかといえばそういうわけでもないという事情と同じです。

相手の要望に応えられる英語力があればそれで十分です。貿易条件を変えてほしいといっているのに、検討違いな回答をしたり、相手が求めているものと異なるものを提案してしまうとか、ともかく相手の要望、ニーズを汲み取るだけの力があればよいのであって、それは英語力に比例しているわけではないといえます。

うちの海外営業部で最も売り上げをあげてくるボスは、TOEIC最高点は770ですが、以前は500点ちょっとでした。当時も売り上げが低かったわけではありません。

大仰なしゃべり方で、電話でも隣の部の電話音をかき消すほどの大声で、「オーイエース!ザッツライト!」といった古式ジャパニーズイングリッシュの使い手ですが、ボキャブラリーもあまりなく、英文メールも中学生でも間違えないようなミスもします。でも売り上げトップです。海外の展示会などに行くと、ボディービルディングで鍛えこんだ筋骨隆々の肉体を誇示しつつ、身振り手振りを交えて圧倒的な迫力を持って、見込み客に自社製品の説明をします。また言葉が足りない部分は実際のデモを体を動かして行い、客を引き寄せていきます。

海外営業を未経験でやりたいのならば、まずは営業力のアピール、そしてタフネスや海外営業としての適性をアピールしていくのがよいでしょう。「自分は海外営業に向いているんです」とは言わずに、相手にそう思ってもらう方法を考えることからはじめてみるとよいでしょう。もちろん、英語力も未経験者ならばアピールしましょう。ただし、英語ができるから自分は海外営業がしたいという論法だけでは通用しないことのほうが多いと思います。

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