就職活動中の学生です。私は学生時代に英語と中国語を勉強し、短期間ですが中国には留学もしていました。ある会社で、面接のとき「語学は所詮ツールでしかない」というようなことを言われ、答えに困りました。
新卒の面接などで語学力を強くアピールする場合、「語学はツール」というのは常套句のようなものです。企業側の言い分としては、言語はあくまで道具であって肝心なのはそれを使ってどんな仕事をするのか、どう商売に結び付けていくのかが聞きたいということでしょう。あとは、語学ばかりアピールすると、「通訳以外の仕事はやる気がないの?」ということになります。実際に会社で働いたことがない学生にこうしたことを言うのも筋違いな気もしますが、「あなたはうちの会社に入って、自分の持つ資質・能力でどんな貢献をしてくれるのか」という点が見えれば採用担当としてはいいわけです。
ほとんどの方は、総合職という枠で応募することになると思いますが、その際にはやはり「コミュニケーション能力」の有無が分かるような経験やエピソードを添えないと、アピールするポイントがずれてしまいます。例えば中国へ留学していたのであれば、中国人やそのほかの留学生たちとのコミュニケーションを日本にいる学生よりもはるかに多くとっていたわけですが、「カルチャーショック」などを受けた経験や、意思疎通がはかれずに苦労したときどのように対処したのか、あるいは彼らと何か一緒に課題をこなした、共同で制作した、研究したとかそういった話があったほうがよいかもしれません。また反日の実際や、メディアでの報道とのギャップ、今後のビジネスに影響を及ぼす中国国内の社会情勢の変化などについても日本にいた学生よりも多くの経験を積んでいるわけですから、その辺をアピールすると良いでしょう。
「経験したこと」「それについてどう考え、どう対処したのか」「そこからどんなことを学んだのか」といったことを具体例で説明すると担当者もイメージがつかみやすいでしょう。もちろん、この際に、中国語のスキルや英語のスキルについても仕事に結び付けていけるようなレベルにありますよ、というのはさり気なくアピールしておくとよいでしょう。それを単に「中国語が出来ます」「英語が出来ます」で終わってしまうと、アピールになりません。
筆者の個人的な見解では「語学はツール」とのたまう試験官は、語学の素人です。使う言語は、思考そのものを支配します。例えば、色をあらわす言葉に「黒」「白」しかない言語を使う人に、赤や青、黄色について説明するのは困難です。こうした分野について勉強した方ならご承知の通り、「翻訳」というのも完全に「ある言葉」に対応する言葉がないケースのほうが多いです。微妙に意味がずれていたり、意味する範囲が正確には少し小さかったり、大きかったり、といった現象がままあります。外国語で深くやり取りをすればするほど、言葉の違いは「単なる言い方、音の違い」ではないことがわかります。
その言語を使う人たちに固有の「考え方」というようなものがどの言語にもあります。文化や商慣習とも密接で、単なる「ツール」のわけがありません。思考そのものを言語以外のもので行っているというならば話は別ですが、ほとんどの方はものを考えるとき「言葉」を使うと思います。このとき、ある国・地域の言葉はすべての「土台」となります。
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