ヤンキー、パキスタン人に騙される
うちの海外営業部の主砲、パンチパーマのヤンキーがパキスタン向けに当社の製品を売りさばくようになったのが先々月くらいからです。妙な売れ行きで、いったいどんなトリックを使ったのかと弊部の金庫番である姉御も訝っていたのですが、当の本人は「俺の実力だ。この調子でまずは1000万」といきまいていました。
で、代金もあろうことかT/T in advance条件で先方が飲んでいたため、すべて現金が入金されてからの発送となり、代金回収の焦げ付きも起きていませんでした。ヤンキーいわく、相手はビジネスを立ち上げて一旗あげようとしているディーラー(販売会社)だということでしたが、詳しく聞くと「ぶっちゃけ、何者かわからねえ」ということだったのですが、あるとき、パキスタンから実際に日本にきて当社の製品を一通り見たいという申し出がありました。
何人かで来るということで、当社は機械も扱っているため、一応ショールーム見学とデモ実施、販売の仕方について技術指導を行うといった名目でインビテーションレター(招聘状)を書いて、日本へ招待することになりました。
これにはヤンキーも俄然テンションがあがってきたようで、普段の2割り増しで調子が出ていた感じです。ホテルも予約し、現地の日本大使館から、一応、当社へも電話が入り、このパキスタン人たちを本当に招待したのかという照会がありました。ヤンキーはさも当然といった言い方で、取引先である旨説明し(たしかに当社の製品を購入いただいているので取引先ではあります)、ショールームや資料、プレゼンの準備を進めてきました。
そうして来日の当日を迎えました。
ヤンキーは大好きな直行ができるということで、前日から会社の車で自宅へ帰り、空港へ迎えにいきました。
しばらくすると、海外営業部にヤンキーから電話が入り、パキスタン人たちから何か連絡がないかと苛立った様子です。
予定のフライトはもう到着しているのに、一向に待ち合わせ場所に姿を見せず、ヤンキーはゲートでも自作のプラカードを持って待っており、何人かそれらしき搭乗者に声をかけたがどれも違ったということでした。
あまりに遅いので今回はフライトに乗遅れたのかと思い、航空会社に搭乗者名簿を確認してもらったところ、乗っていたということが判明。どうやらヤンキーを素通りしてもう日本国内に入ってしまったようでした。
結局、この日、ヤンキーはパキスタン人たちを探すために空港やらホテルやらを奔走しましたが、彼らは日本に入国したが、その後行方がわからなくなったということだけが分かりました。ホテルの不泊によるキャンセル料をしっかり払うことになり、たいそうご立腹で翌日出社してきたのですが、まずはパキスタン時間の朝9時頃になると、先方へ電話をかけはじめました。
来日前は、英語で電話すると、英語の分かるものが出てきたらしいのですが、なぜかもう英語が分かるものがいなくなっており、何をいっても相手は「チィー」といって電話を一方的に切られるだけで意思の疎通がはかれないとヤンキーは激怒。
ほどなくして、インビテーションレターをもらい日本へ不法入国するために利用されただけだと気がついたヤンキーですが、もう後の祭りです。
彼らのメールにはこれから取引が拡大するというようなことが匂わせてあり、海外展開を狙っている中小メーカーにとってはなかなかよい話と思わせるあたりがたいしたものです。その後、パキスタンからの問い合わせがあっても、ヤンキーは普段と変わらずに対応はしていましたが、二度とインビテーションレターは書きませんでした。
スポンサーリンク