貿易事務の資格
商品を製造してからお客様に届けるまでには様々な企業が介在しますが、そのうちのどの部分を担う企業なのかによって、必要な貿易事務のスキルや資格は微妙に違うところがあります。
資格としてよく知られるものには「貿易実務検定」があり、満遍なく問題が組まれたよい資格ですが、実際に業務をするにあたってはこの資格がないとできないというものではなく、貿易事務の世界では経験がもっとも重視されます。したがって資格ありき、ではない点に注意が必要です。
また資格をとったからといっても、テキストに載っていないような事例は日々の業務で山ほど出てきます。こうした点を踏まえ、基本的な知識を学習する意図で取得するのであればとても有用な資格といえます。また、貿易実務の未経験者があらたに仕事に就きたいと考える場合も、この資格をとっておくとプラスにはたらくでしょう。貿易事務に対する意欲や意気込みが口だけではないことを証明することができます。
他には米国公認貿易実務検定(CITLS)と呼ばれる資格もありますが、これは日本の資格ではない上、国内の事業所で勤務しつつ、輸出・輸入・三国間貿易などにかかわる貿易事務職にはあまり関係がなく、使い道もほとんどありません。忘れてはいけないのは、日本の企業が日本で募集している「貿易事務」が何をする職種なのか、という点です。
たしかに、自社の海外拠点などへの輸出で、輸出先の企業に貿易に詳しい人材がいない場合、現地の通関や輸入規制や許認可問題の知識がどうしても欲しいときがあります。ただ、仮に米国の貿易実務検定をとったとしても、こうした細かい内容は実際の業務経験を通じてしか得ることができません。他国についても同様で、その国で実際に輸出入業務に数年間かかわっていた場合、非常に希少価値の高い情報や経験をもつということになりますが、資格だけというのであればあまり大きな力にはなり辛いです。もっとも何らかの海外の貿易系の資格をもち、こういう業務ができるというアピールが明確にできるのであれば、就職活動時には評価してくれるとは思います。
また貿易事務とは少しカバーする範囲が異なりますが、通関業務を行うスペシャリストである通関士の国家資格があります。これは貿易事務の志望者がもっていることは稀で、マネージメントクラスの方が知識として保有していることはありますが、実際はフォーワーダーに通関業務を委託するのが一般的なため、なくても業務に支障がありません。もちろん、持っていればプラスになりますが、その場合、貿易事務としてやっていくというよりは、通関士として働く人のほうが多いと言えます。
- 貿易実務検定
- 貿易実務検定の公式サイト。実務優先、経験が重要な貿易実務の世界でも、網羅的な問題構成や基礎から中上級者に必要な知識を満遍なく問題に取り入れた資格です。これがあるからといってすぐに貿易の一線で活躍できるわけではありませんが、基礎知識を持っていることや貿易実務をやりたいという意欲をアピールすることはできますので、未経験で貿易事務をやってみたい方はチャレンジしてみるとよいでしょう。
- 通関士試験(税関)
- 通関士に必要となる国家資格。通関士試験の要綱を税関にて公開。通関業務を行う事業所には必ず必要な人材となります。貿易事務とは少々カバーする範囲が異なりますが、貿易にかかわる仕事がしたいというのであれば、こちらも候補といえるでしょう。
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